大阪府下、レプトスピラ症についての注意
- HAB保護動物クリニック 飯岡 恭子
- 2017年10月31日
- 読了時間: 5分
大阪府から、各動物病院に対しレプトスピラ症に対して
注意をするようにとの勧告がありました。
日本でも山間部ではご存知の方も多い病気ですが
都市部では発生はないと今まで言われてきました。
そのため都市部の動物病院では「ワクチンは5種」で良いというのが
通説というよりもほぼ常識となっていました。
アウトドアで山間部に連れてゆくことのあるワンちゃん以外には
5種ワクチンを打つことを奨励する、ということです。
しかし5種ワクチンにはレプトスピラ症の予防は含まれていません。
レプトスピラ症は「届出伝染病」という公的に指定された伝染病ですので
感染すると大変なことになります。
レプトスピラ症についての知識を持っていただき
感染を起こさないように自衛することが大切です。
<レプトスピラ症とは>
レプトスピラ症とは、病原性のあるレプトスピラ菌に感染することで発生する
伝染病です。
レプトスピラ菌には数種類のタイプがあり、それぞれに特徴的な病状がありますが
どれにも共通することは「非常に重篤な病気であり、死に至る可能性が高い」ことと
「伝染する」ということです。
犬がレプトスピラ症に感染する原因は、主に二つです
「既に感染しているイヌ科動物・ネズミの尿に触れる・口にする」
「既に感染しているイヌ科動物・ネズミの尿の混じった土や草、食べ物などを
食べて感染する」の二つです。
感染そのものは、イヌ科動物・ネズミにかかわらず起こります。
ですので人間や猫にも感染します。
不顕性感染(レプトスピラ菌に感染して回復した状態)の動物の尿には
レプトスピラ菌がたくさん含まれています。
特に狸・狐などのイヌ科の野生動物、アライグマやヌートリアなどの外来野生動物は
感染源となりやすくそれらの動物の尿と接触しやすい山間部での感染が主だと
考えられてきました。
しかし、今年の春から大阪北部の猪名川河川敷近隣での発生が報告されており
調査により「都市部での流行が始まっている」と判断されました。
近隣での注意が必要とされています。
この先は、病気の様子や予防法についてお話致します。
<レプトスピラ症の症状とは>
犬のレプトスピラ症は主に3つの発症パターンがあります。
①出血型レプトスピラ症
劇症となりやすいものです。
出血とあるとおり、あらゆる場所から出血します。
腎臓や消化管の出血は血便や血尿となり、呼吸器からの出血は鼻血や喀血となります。
急性で激しい出血を伴うことから、発症から死亡に至る時間が非常に短く
治療できないことも多いです。
人間にも感染しますので、その場合は排泄物や吐いたものには直接触れないように
気をつけましょう。
②黄疸型レプトスピラ症
黄疸というのは、肝臓にダメージが起きて消化酵素を分解できず
血液の色が黄色く変化する状態です。
そのため、皮膚の薄いお腹や耳の皮膚をよく見ると薄く黄色に染まって見えます。
また、白目の部分は黄疸による変色を確認しやすいです。
発熱を伴うことが多く、肝臓の負担が大きい場合は死に至ることも多いです。
③不顕性感染
野生動物に多いケースですが、まれに飼い犬などでも見られます。
流行のキーになる感染タイプで、症状は特に見られませんが
血液中にはレプトスピラ菌が常にあり、尿にソレを排出します。
血液検査でレプトスピラに対する抗体価を調べることで発見できますが
無症状なのでほとんど見つかることはありません。
<レプトスピラ症の予防>
恐ろしい伝染病だということはお分かりいただけたかと思います。
どのようにして避けるか、という問題には二つしか解決法がありません。
①感染源と接触しない
触れる・口にすることで発症しますので、発生が報告される地域に行かないことで
予防をすることは可能です。
しかし発生地域は常に変化しているので、感染の危険性は常にあることを
ご理解ください。
②ワクチンを打つ
現在打っておられるワクチン証明書をご覧いただくと予防できる伝染病の種類が
かならず記載されています。
その中にレプトスピラ症があることを確認しましょう。
しかし、レプトスピラ症は数種類のタイプがあるため
ワクチンによっては2種類しか予防しないものもあります。
最大で5種類の予防が可能なワクチンもあります。
日本での発生の多くはこの多いタイプのワクチンに含まれるものが多いので
種類の多い方を選択されることをおすすめします。
レプトスピラ症の予防をできるワクチンには「不活化ワクチン」しかありません。
不活化ワクチンとは、病原菌を殺した欠片とともに体が異物と判断しやすい薬剤をともに
打つことで「体が病原菌を認識、学習する効果を高める」タイプのワクチンです。
異物を打つため(もちろん、病原菌も異物ですが)、しこりが残ったり注射のあとに
腫れが強く出ることもあります。
かかりつけ医ときちんとご相談の上、接種することをおすすめします。
<レプトスピラ症の治療>
伝染性がある病気ですので、隔離し厳重な感染防御管理を行った上での
入院と治療が必要となります。
治療はおもに抗生物質の輸液、肝臓を守る薬・止血剤の投与となります。
しかし、劇症になることも多く飼い主さんや保護主さまが気づいた時点では
手遅れになっていることも大変多いです。
ですから、まずは感染させないこと、が大事だと理解しておきましょう。
<まとめ>
恐ろしい伝染病ではありますが、日本でも山間部や自然の多く残る地域では
普通に発生している伝染病です。
きちんと予防すること、どんな症状が出るのか知っていること、
感染源となるべく接しない工夫をすること。
きちんと徹底すれば、大きな広がりは起こさなくて済む可能性もあります。
(野生動物は長距離の移動をしない、寿命が短い)
まずはワクチンでの予防をきちんとしてゆきましょう。
かかりつけ医とご相談の上、予防のスケジュールを立て直すことが
大事ですね。
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